MTシリーズが絶好調なヤマハがタイで生産・発売しているアジア市場向けのストリートスポーツがM-SLAZ。MTシリーズとは異なった個性とスポーツ性を備えたライトウェイトスポーツは日本の道にもピッタリ!

日本はもちろん、世界中のオートバイメーカーにとって重要な市場となっているのがタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、インドといったアジア諸国。そうした国々では生活の道具としてオートバイが使われることが多く、ミッション付きのアンダーボーンフレームタイプとオートマチック変速のスクータータイプが大きなシェアを占めてきた。ここ数年で所得の向上や交通環境の改善によってスポーツモデルの人気が高まり始めているが、現地の感覚だと250㏄以上のオートバイや輸入車は贅沢品。庶民の手が届くのはアセアン域内で製造された125〜150㏄程度の単気筒エンジンモデルだ。

このM-SLAZ(エム・スラッツ)は、08年にインドで生産を開始したYZF-R15のエンジンとフレームをベースに、MTシリーズ譲りのアグレッシブな外装デザインを組み合わせたストリートスポーツ。国を跨いだプラットフォーム展開として、昨年12月からタイ・ヤマハで生産、販売されている。

フロント回りにマスを集中させたデザインは存在感あるものだが、サイズはMT-25などの250モデルよりひと回り小さく、135㎏という軽さもあって取り回しは楽々。車格の割にシート高が高めだが、スリムな車体なので足着き性もいい。

コミューターとしての動力性能には何ら不満はない。低回転でも力強い、とまでは言えないが、発進時にクラッチ操作に気を使う必要はないし、適当にシフトアップしてもスムーズに車速が増す扱いやすいエンジン特性だ。6000回転あたりからレスポンスがクッキリし始め、レブリミッターが効く1万回転までの加速フィールはなかなか爽快。6速・100㎞/h時は約7500回転だが、音も振動もさほど大きくないので「回っている感」は薄く、最高速も130㎞/h程度まで伸びる。試乗では高速道路を100㎞程度走ったが、交通の流れに乗って走っても全くのストレスフリーだった。

タイ生産モデルらしい、と感じたのはサスペンションのセッティング。フロントのφ37㎜倒立フォークはスプリングもダンパーもソフトなのに対し、リアのリンク式モノショックはやや硬め。これは路面の悪い場所が多く、タンデム比率が日本とは比較にならないほど高いタイの使用環境を考慮したものだろう。シートも硬めで、日本の道を一人乗りメインで乗るなら、リアのプリロードを弱めて突き上げを減らしたほうがいいだろう。

この前後サスペンションを含め、車体剛性は高く、フロントの接地感がしっかり伝わってくるのも特徴。荒っぽく扱っても姿勢変化が少なく、エクストリーム的に振り回すようなライディングでも頼りなさは感じない。

通勤・通学の足、というにはもったいない運動性能がM-SLAZの魅力。様々なライディング技術を習得するための練習用としても優れた適性を持っている。